職場は原則全面禁煙に(2011年1月)
最新タバコ事情95


 「たった1本でもDNAに障害が」というショッキングなリポートが最新の米国公衆衛生局長官報告(SJR)で出された。これは以前から知られていた、「タバコの発がん性には、安全とされる閾値がない」という研究をきちんと取り上げただけの事だが、多くの、本数を減らせばより安全と思い込まされていた喫煙者には重大事であろう。
 タバコの煙には最新の研究では6800種類の化学物質と69種類の発がん物質が含まれるとされる。これがほぼ野放し状態で、ダイオキシンや食品添加物は、それこそ実証困難な低レベルの発がん性でも話題となり規制されるが、この桁外れな環境汚染物質はメディアを含め誰も目を向けようとしない。
 さすがに行政として諸外国の喫煙対策とのギャップに気が咎めてか、昨年12月11日厚労省が職場環境の整備義務として、「完全分煙か全面禁煙以外は認められない」とした踏み込んだ通知を出した。ところが情けないことに、罰則を付けるのは今回もやはり見送られたのである。
 おそらく財務省と厚労省の力関係なのだろう。これでは国民の健康を守るという視点からではなく「タバコ規制枠組み条約・FCTC」と整合性を取るための苦し紛れの通知と見られても仕方がない。おそらく罰則なしでは順守などされないし、安全な職場への環境整備が推進されることもないだろう。
 諸外国ではレストランやバーに至るまで法のもと罰則を伴って喫煙規制が行われている。これらはすべて科学的根拠から法制化されたもので、世界の政府はタバコ企業と厳しく対峙している。
 わが国はいつまで政府が薬物ビジネスを続けるつもりなのか。あの忌まわしい「タバコ事業法」を温存し、喫煙対策はそれらしく打ち出しておくという、やる気のない見本のような通知であった。

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