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高校の喫煙室はダメ・値上げもダメ(2009年1月)


最新タバコ事情72

 愛知県で全寮制私立高校に喫煙室が設けられていたことが判明、県警は「未成年者に対する喫煙場所の提供」という条例違反で書類送検し、同校も直ちに喫煙室を廃止したとの報道が教育界で大きな論議を呼んでいる。
 まったく同じ状況の事件が平成4年長野県戸倉上山田中学であった。敷地内いたるところに吸殻が散乱する事態に熱心な教師たちが正面から取り組み、理科室で指導しながらの喫煙を認め、効果が見えてきた頃「学校に喫煙室」と大きく報道された。当然教育委員会は「罷りならん」と断じこの試みに終止符が打たれた。今回の顛末は、その後16年間教育界で議論が進むことはなかったということである。
 この学校は全国からの不登校、中退高校生の受け皿として有名だが、その最大の理由は「ニコチン依存による学校生活不適応」ではないのか。メディアの浅薄な取り上げ方にも悲しい気持ちがした。また、今やニコチン依存症は健康保険で治療が認められた病気であり、パッチによるニコチン代替療法は子供や若い人たちに少量で驚くほど効果があるものの、健康保険の適応からはなぜか除外されている。未成年者に「さあ、冒険しよう。瞬間のキラメキを試してみよう」と煽りたててタバコを差し出す「国」があり、それに引っかかった子供たちや建前を守らない教育者が悪いという構図はどうにも承服しかねる。
 メディアもやっと世界に比べ半値以下という安いタバコ価格の異常さに気づいた。たばこ規制枠組み条約(FCTC)は強く価格の引き上げを求めている。子供たちが買えない値段にするのがその大きな狙いである。企業側はタバコ耕作者や小売業者を前面に立て、族議員が税収を財源問題にすり替えるなど、なりふり構わぬ妨害工作を行なっているが、国際価格600円が次世代への良識というものである。

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