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タバコで還暦が遠く(2004年11月)


最新タバコ事情61

 高信太郎さんの興味深いエッセイを読んだ。「ついに還暦を迎えた」というタイトルで、漫画家歴四十年のベテランの話として、漫画界の、ある事情を述べていた。
 「世界に冠たる長寿国日本で六十歳など、たいしたことないといわれるかもしれない。しかし、わが漫画界では違うのだ。どういう理由か漫画家というのは五十を越えたとたん、まるで申し合わせたかのようにバタバタと死んでしまうのである。」として、先輩や同期、後輩の中に還暦を迎えられなかった十一名ほどの人々の名を思いつくまま挙げておられた。上村一夫、谷岡ヤスジ、福地泡介氏…印象に残る個性的な人々が早々に亡くなっていたのである。
 禁煙ジャーナル主宰の渡辺文学さんが高さんの知り合いで、それらの方々の喫煙歴について問い合わせたところ、「ご推察のとおり全員がスモーカーでした。私も禁煙しなければこの仲間に入っていたと思います。」との返事をいただいたという。
 喫煙と寿命に関して、いま一番信頼性が高いと考えられている英国のR・ドールの報告では、喫煙者が七十歳まで生きる確率は50%である。漫画家の高い喫煙率は以前から聞いていたが、今このような形で姿を現してきたといってよい。死亡の原因はがん、心臓病、脳卒中と多岐にわたるが、タバコがそれぞれに深くかかわっていたことは明らかである。タバコにより「老化」が急速に進むことが短命の原因であろう。
 高さんのお話は不思議でもなんでもない。タバコについての世界の常識が、まだ日本で非常識なだけのことなのだ。

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