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タバコ病訴訟に不当判決(2003年11月)


最新タバコ事情51

 10月21日、東京地裁において5年あまり続いた論争に一応の決着がついた。今までの息詰まるやり取りや、曖昧な部分をそぎ落としても尚膨大な書証の蓄積、津田敏秀医師を中心とした現代疫学の進歩に目を見張りながらその進行を追ってきたことから、判決傍聴の緊張と期待はかなりのものであった。
 ところが「原告らの請求をいずれも棄却する」の主文以下、突然JTのパンフレットの世界に突入し、聞くに堪えない幼稚な、被告国、JTの擁護論が始まった。曰く「タバコの害はもはや社会的常識である。また、ニコチンの依存性はアルコールなどより“格段”に弱いので、喫煙者は意思、努力で禁煙できる。しかし、日本男子の50%が害を知りつつ喫煙を続けているのは、広く国民に受け入れられた嗜好品であるからである」と続く。
 昨年10月に突然裁判長の首がすげ替えられ、タバコ病訴訟の法廷が冷え冷えとした雰囲気にガラリと変わったことを思い出す。喫煙者の裁判長が、膨大な準備書面を読んだ様子はない。私の感じでは、国、JTを傷つけぬよう組まれた判決のフレームに合わせて乙号証(JT側書面)から必要な主張を摘みだして、「ホイ」と作ったとしか思われなかった。
 伊佐山芳郎弁護団長が「まず結論ありきということで、判決に意図があったのではと勘ぐってしまいます。司法の自殺行為です。直ちに控訴します。」と表明したように、私も裁判というものの軽さと恐ろしさを一挙に味あわされた思いであった。
 しかし、殆んどの新聞論調が「時代遅れの後向き判決」、「国民の健康を考える視点がない」と批判的であったのには、救われる思いがした。

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