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タバコを吸う理由は(2003年9月)


最新タバコ事情50

 先日、水戸の高校の禁煙講話で、香港のテレビ局から取材を受けた。香港でも問題になっている青少年のタバコ事情を日本と比較して、その問題点を探ろうという企画だ。
 講話撮影の後、最初の質問は「なぜ、日本の高校生や若い女性は、こんなに喫煙するのか」というものであった。「皆、寂しいからタバコに手を出すのですか、人生に問題を感じているのですか、家庭や友人関係の悩みなのですか」と矢継ぎ早に聞かれ、答えに窮した。質問のポイントがのみ込めなかったのである。
 話していて気づいたが、香港ではタバコはアヘンや大麻などとひとまとめに教育されており、ドラッグは人生の暗さから、あるいは解決できない悩みからの逃避として手を出すもの、という考えが根本にあるようだ。
 私は、日本では国がタバコを売っているので、タバコについて正しい情報が社会に伝わりにくい事情があること、宣伝が激しく、吸うか吸わないかを考える判断力がつく前に、タバコに手を出してしまう子どもたちがほとんどであることを話した。
 子どもたちの禁煙教育で決定的に欠けているのは、タバコを「薬物・ドラッグ」として捉えさせるという視点である。その根深く、恐ろしい規模の健康被害が明らかにされた今でも、国は「薬物」と認めようとしない。小泉政権にも国民の健康を守る観点での政策転換がある様子はない。こうして目先の税収を盾に、タバコを巡る利権体質が温存されていく。
 JTも、これから相次ぐだろう訴訟対策を慎重に見越したうえで「私の意思、私の価値観で、私が吸う」という刷り込み広告を強引に繰り広げている。10月21日は東京地裁「タバコ病訴訟」判決の日である。

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