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タクシー禁煙化、全国に(2010年11月)


最新タバコ事情93

 都道府県レベルでのタクシーの禁煙化は2007年6月大分県で始まり、その後全国に驚くような広がりを見せた。最後まで残っていた和歌山県のタクシーが来年1月1日に禁煙化施行を決定し、これで全国47都道府県すべてで「禁煙タクシー」が運行されることになった。わずか3年半にこのような変化が起こることは誰にも全く予測できなかったことで、タバコをめぐる社会変化の大きさには今更ながら驚かされる。
 乗客の喫煙に耐えきれず換気のため窓を5cm開けただけで、タクシーセンターに通報され、乗客の気分を害したとされて指導処分の対象となった時代が永く続いていた。しかし04年頃から、乗務員の基本的人権として健康被害から保護されるべきではないかとする裁判が東京、神奈川で起こされた。お客さんが喫煙するタクシーに自ら粉じん計を抱いて乗り込み計測した産業医大研究員の中田ゆりさんの体を張った研究などから、その汚染の凄まじさが大きくメディアで大きくとり上げられた。結果的に損害賠償は認められなかったものの「タクシーは全面禁煙が望ましい」との付言を得て、実質的勝訴といえる判決となった。
 これは大きな反響を呼び、お客さんのサービス(吸う権利)か、乗務員の受動喫煙被害を避ける権利を認めるべきかで多少せめぎあいはあったものの、全国であっという間に県レベルの禁煙化が進んだのである。その早さは私たちの想像を超えるもので、わずか3年半で全国のタクシーが禁煙化されることになった。
 乗務員に限らず多くの利用者がじつはあのヤニくさいカビ臭い車内を避けたいと思っていたのだ。喫煙者とのトラブルや売上減を怖れていた経営者も、それがまったくの杞憂であり、乗務員の健康保持に大きく役立つことを知ったのもこの社会変化の力になったようだ。

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