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JTの偽善・CSR活動(2010年9月)


最新タバコ事情91

 不景気のなか、多くの企業がその社会的責任(CSR)から社会貢献活動を続けている。ただ、企業によっては国際条約でその活動が明確に否定されているものがある。「タバコ規制枠組み条約第13条」は、タバコ会社においては「社会的責任を果たすために行ういかなる形態の寄付行為」もスポンサー行為、タバコの販売促進活動となるため禁止しなければならないと定めている。しかし、わが国では国内法の拘束力が不十分であるのを良いことに、タバコ企業は国際的には認められないCSR活動を行っている。
 これらを「文化」の名のもとに行っている例が、N響をはじめすべて日本のプロオーケストラに対する資金援助。また多くのジャンルの音楽イベント後援やJTいきいきフォーラムなども同様。さらに「JTの森」と言った緑化事業や世界の激甚災害の支援まで手を伸ばしている。
 そこで心配なのは、活動の狙いが若い世代に向いていること。JTこども将棋大会、子どもバレーボール教室、相撲大会にまで広がり、様々な青少年育成事業にかかわるNPOには、100万円単位の資金が助成されている。
 これらは一見「それがなぜ悪いの」との疑問を抱かせるが、「タバコって、まぁいいところも悪いところもあるよ」という強力な刷り込み宣伝活動であることをWHO(世界保健機関)は喝破し、その包括的禁止を強力に進めているのが世界の常識。
 これらのお金は本来国庫に入るべきもので、JTが文化の名を借りて勝手に配布するのはおかしい。少なくとも独立した機関を設け、ヤニ色のつかない資金として与えられるべきものである。 
 今回の値上げも、3分の1は財務省のお墨付きのもとしたたかに企業の取り分としている。「タバコマネー恐るべし」と心しなければならない。

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