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何よりも無煙の環境整備(2010年7月)


最新タバコ事情89

 今、禁煙教育で二つの事が大きな問題になっている。一つは、父母への喫煙習慣の蔓延である。80年代のタバコ輸入自由化以来90年末まで何でもありのタバコ大広告時代に思春期を送り、喫煙習慣に無知むしろ好意的な人々が現在の小、中学校生の親となって、多くが子どもたちに喫煙する姿をさらしている。特に母親の影響は極めて大きい。
 私たちの調査でも、「吸う」と答えた280名の中学生の母親の実に52%が喫煙者で、「吸わない」と答えた8901名の生徒でも22%の母親が喫煙者であった。喫煙に対して正しい教育を受けていない父母にことの重大性を理解してもらうのは極めて困難で、この身近で最も影響の大きい人々への介入が全く手付かずの状態になっている。
 PTA活動に絡めて理解を得るくらいしか方法はないが、生徒への禁煙教育で、父、母が早死にする可能性の大きさや受動喫煙の怖さをきちんと教えることは意外と大きな抑止力になるようだ。
 二つには、タバコ会社が行っている社会貢献に見せかけた多様なイメージ戦略である。タバコ規制枠組み条約(FCTC)違反を承知の上で、幅広く地域家庭を巻き込んだCSR活動をくり広げており、それは30〜40代の父母に抵抗なく受け入れられ、裾野の広いムーブメントとなっている。これらのエセ社会貢献活動がどれほどの悪影響をもたらすかはまだはっきりしないが、やはり子どもたちの潜在的なタバコ容認意識につながるおそれが強い。
 近年、教育環境の無煙化が急速に浸透しており、全く対応がとられていないのは全国でも数県となった。とくに茨城県では学校敷地内禁煙が徹底され、喫煙による補導件数が激減している。無煙環境整備の効果には目を見張るものがあり、家庭がタバコの煙に無縁になれば子どもたちを守る大きな力になるだろう。

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