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横浜タバコ病訴訟に判決(2010年2月)


最新タバコ事情84

 「タバコ産業に何ら責任はない、病気との個別因果関係は不明、依存性はアルコール以下、何を言ってもダメ」という第一次タバコ病訴訟と呼ばれる東京タバコ病裁判(‘97〜)判決を受けて、横浜地裁に提訴されていた第二次訴訟というべき横浜裁判に判決が下された。判決は原告敗訴としたものの、五年間の口頭弁論の結果や社会情勢の変化を無視することはできず、日本の裁判所では初めてタバコの健康に及ぼす有害性、危険性(肺がん、肺気腫との因果関係)を明確に認めた。
 ただ判断の重要なポイントであるタバコの麻薬並みの依存性については、定性的にはこれを認めたが「決して軽視することのできない程度のものというべきである」とその強さについての判断を避け、JTがそれを認識しながら違法に製造販売を続けてきたとは言えないと判示した。
 しかし「これは本件判断対象期間での判断」であり、その後現在に至るまでの知見の深化、公衆衛生的施策の進展があり「今後のタバコ製造販売のあり方については国民的議論を待つべきで、最終的には国会における様々な審議の観点から決定されるべきことである」とわざわざ付言した。棄却の判断を導くために相当苦しんだ様子がうかがえる。
 弱腰の判決ながら前回の東京タバコ病訴訟に比べれば格段の進歩が得られたという見方もできるが、なおも政府、JT、裁判所は一体であり、国民の健康に生きる権利を守ろうとする意志がないと判断され、東京高裁への控訴が決定した。
 この結果はAP通信を通じて世界中に配信され、ワシントンポストはじめ多くの国のメディアで報道されたが、わが国では主要紙の神奈川地方版に掲載があったのみで電波媒体メディアは沈黙したままであった。彼らも大いなる無知に見事に支配されている様子である。

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