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がんを避ける権利(2009年11月)


最新タバコ事情81

 ご存じのように、わが国の死亡原因のトップはがん。多くの方々は文明病と信じているようで、世界中でまだがん死亡がどんどん増えているとの印象をお持ちのようだが、違う。少なくとも先進国と言われるほとんどの国でがん死は大きく減っている。わが国も女性では明らかに減少、しかし男性でがん罹患率の減少に拘わらず、がん死がむしろ増えている。これは男性に死亡率の高い、つまり助からない肺がんが急激に増えているからと考えられている。
 わが国の最新のがん予防指針には、まず一番目に「タバコは吸わない。吸わない人も他人のタバコの煙を避ける」とある。本人が覚悟の上でタバコを吸うのは仕方がないにせよ、吸わない周りの人まで巻き込むのは許されない。WHOが「タバコ煙濃度に安全なレベルは存在しない」と強い警告を発しているように、技術の粋をつくしても分煙などで安全な空気環境は得られない。
 「タバコの海に浮かぶ禁煙国」と言われる米国も、一朝一夕に国民が無煙の世界で生活する権利を得たわけではない。タバコ産業とのし烈な一進一退の戦いの中、がんの恐怖を避ける権利、安全な環境に生きる自由を勝ち取ってきた。アメリカがもし連邦政府にタバコ問題を委ねていたら、タバコ産業が勝利しただろうといわれている。しかし子供たちを守ろうとする医師会や職場環境の安全にかかわる身近な労働団体、さらには州政府といったサブシステムともいえる力が結局は勝利し、米国を禁煙国に変え、がん死を減らすことに成功した。
 私たちの生活の中で六十種類もの発がん物質に遭遇する機会などタバコの煙以外にはない。いま国民は無知なまま、まき散らされた多種多量の発がん物質を吸引しながらの生活を強いられている。食用油エコナの発がん性騒ぎなど悪い冗談に聞こえる。

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