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糖尿だけどタバコくらいは?(II)(2009年8月)


最新タバコ事情78

 喫煙が糖尿病に発症から進行、合併症に至るまで大きく関係するかについては以前述べたが、受動喫煙でも周囲の人々の耐糖能に悪影響を与えることが分かってきた。最近、青森県立保健大学渡辺一郎教授らが、タバコを吸う学生は脂肪組織から分泌されるアディポネクチンという生活習慣病を防ぐ大切なホルモンの血中濃度が低く、また周囲の人々も受動喫煙の影響で低下することを報告していた。
 今、次世代を産み育てる若い女性に、喫煙習慣が不気味な広がりを見せている。20代女性の喫煙率が30%を超える都市はもう珍しくない(ポーラ化粧品調べ)。タバコを吸う女性の多くは血中女性ホルモン濃度が低く、妊娠しにくい。そして最近、妊娠時、特に妊娠初期のタバコが胎児に与える悪影響が心配されている。生まれてくる子が肥満児になる率は3倍、英国の研究では妊娠中の喫煙は30年後の子供の糖尿病リスクを4倍に高めると報告されているのだ。
 このように喫煙に関わる不都合な真実が次々と明らかになっても、わが国では未だタバコはコーヒー紅茶と同じ「大人の嗜好品」とされている。タバコの煙には60種類を超える発がん性物質が含まれているが、もしコーヒー紅茶にこれだけの発がん物質が入っていると分かっていても皆さん毎日喜んで飲むだろうか。タバコは7割以上の人がやめたいと思いながら吸い続け、若者たちは無知なまま次々と喫煙者の仲間入りをしている。
 世界のタバコ対策の進化は激しい。164カ国間でのタバコ規制枠組み条約(FCTC)は、今世紀中に喫煙習慣を「正常でないこと」とする方向で進められている。法のもと、発がん性ある受動喫煙に晒されず安全に生活できる国が多くなった。次世代のため早く禁煙先進国の仲間入りをしたいものである。

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