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忌野清志郎はなぜ…(2009年7月)


最新タバコ事情77

 忌野清志郎が58歳で亡くなった。死因は「がん性リンパ管症」とある。私たち医師にとっては違和感のある診断書だ。彼は三年前自ら喉頭がんになったことを明らかにしており、闘病三年の経過があっての早逝である。
 これをマスコミは「若すぎる死」「残念で信じられない」「ただ悲しい」と情緒的な報道にとどめ、彼がなぜこの病気になったかについては明らかに避けていた。多くのファンが清志郎は「がん性リンパ管症」で亡くなったのであり、彼が患っていた「喉頭がん」はその原因の一部と考えていることを知り、私は大きなショックを受けた。
 彼が若くして「喉頭がん」で亡くなったと伝えたメディアはなく、夕刊フジが「喉頭がん、愛煙家は要注意」程度に言及していただけである。ロッドスチュワート、ビートルズのジョージハリソンも同じで、タバコを吸わない人はならないガンといってよい。同じころ「津軽海峡冬景色」の作詞家三木たけしさんが「下咽頭がん」でなくなっているが、これも清志郎と同じ病気で原因はタバコである。
 今喉頭がんだけでなく、かっては老人の病気であった食道がんも働き盛りの人々の命を奪っている。彼らは例外なくヘビースモーカーなのだが、酒飲みでもあるためタバコの恐ろしさに正しく目が向けられることがない。
 なぜこんなことになっているのだろうか。メディアに注目しタバコが蔓延した歴史をたどると、タバコ産業は巨大アド会社と一心同体となり喫煙に不利な報道を丁寧につぶし、真実が露わになることを避けてきた。
 今回の信じられないような報道管制?にも、「清志郎ファン世代」にタバコ病の不安を持たせない心理操作の強い意図を感じ、その底力には寒気を覚えざるを得なかった。

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