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神奈川県受動喫煙防止条例ついに成立(2009年6月)


最新タバコ事情76

 神奈川県受動喫煙防止条例がついに本会議で可決された。多数派与党議員の抵抗で、小規模飲食店や居酒屋で大幅な譲歩を迫られたことを揶揄する向きもあるが、私にとっては罰則も明記された十分なものであり、血のにじむような努力してくれた県議会議員やNGOの皆さんに心から感謝の気持ちを伝えたい。
 昭和六一年の中曽根構造改革によるタバコ輸入の全面自由化以来、「健康政策」としてのタバコ問題は打ち捨てられ、これを「経済財政問題」として扱う大きな力が、私たちの日本を支配してきた。つまり国民の健康より税収の都合が優先されてきたが、神奈川条例はこの問題を本来の健康政策に引き戻したと言っても過言ではない。県の条例とはいえ受動喫煙を防止する条例が成立したことの意義は計り知れない。
 「タバコの海に浮かぶ禁煙国」と言われる米国も、一朝一夕に国民が無煙の世界で生活する権利を得たわけではない。タバコ産業とのし烈な一進一退の戦いの中、ガンの恐怖を避ける権利、安全な環境に生きる自由を勝ち取ってきた。アメリカがもし連邦政府にタバコ問題を委ねていたら、タバコ産業が勝利しただろうといわれている。アメリカのメインシステムたる連邦政府は、タバコマネーで身動きが取れなくなっていたのである。しかし子供たちを守ろうとする身近な地域団体、職場の安全を守ろうとする労働団体、さらには州政府といったサブシステムともいえるものが結局は勝利し、米国を禁煙国に変えていった。
 今や神奈川県が、二十年遅れながら私たちに大きな転換点を与えてくれた。これから日本も大きく変わるだろう。松沢知事の揺るぎない「県民の健康を願うポリシー」に深い敬意を表したい。
 亡き平山雄先生が「タバコとの闘いは勝利を約束された戦いなのだ」と繰り返しお話されていたことが思い出される。

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