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タバコ病訴訟(その七)フィリップモリスの教えを受けて(2004年8月)


最新タバコ事情59

 8月2日東京高裁でのタバコ病訴訟第二回口頭弁論を傍聴した。伊佐山弁護団長、山口事務局長も、強引で稚拙な一審判決に全くめげた様子はなく、活気あふれる法廷になっていた。吉岡弁護士の話によると、控訴審というのはだいたい形式的なやり取りになるのが普通だが、この件での裁判長の訴訟指揮は大変丁寧で、何か差し戻し判決の審理のような印象であるという。新しい証人申請についても前向きな様子で、私が見ても裁判所があまりにお粗末な一審判決から、司法の独立性に危機を感じているのではないかと思われた。
 控訴の論点は依存性の判断に明らかな誤り(ニコチンの依存性はアルコールより軽い)があること、喫煙とがん、肺気腫等の因果関係についての認識も国際的に非常識であること、新たに科学専門誌「ランセット」で明らかになったJTと欧米タバコ企業の連携による「反喫煙活動対策」に絞られてきているようだ。
 ランセットの論文は「タバコが健康に有害であることの証拠に対するJTの戦略」という研究で、米タバコ病訴訟で開示された膨大な内部文書から、JTが二十年余もフィリップモリスに懇切丁寧なタバコ規制対策の指南をうけてきたことを明らかにしている。在米日本人研究者によるものだが、マナーキャンペーンや自販機の死守、促販策などは現在でも外国タバコ資本と綿密に相談しながら進めているのが覗える。
 JTはタバコの有害性など早くから承知していながら、延々と国民を欺いてきたことがよく分かり、今更ながらに腹の立つものである。

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