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喫煙と性(2004年5月)


最新タバコ事情56

 思春期はすべてが新鮮で興味の対象となり、それを不安定ながら柔軟に吸収できる素晴らしい時期である。今、タバコ産業は思春期の特性を知り尽くしたうえで、この時機を狙って巧妙に喫煙習慣を滑り込ませている。
 悪いことに、この世代の親達は禁煙教育などうけることのないまま80〜90年代の最も激しい野放図な宣伝攻勢に晒されて育った人々である。親にすら欠如している「タバコを吸うのは悪いこと」という規範意識を思春期世代に求めるのは無理なことだろう。
 こうしてみるとタバコは、大きな社会問題である若い人々の「性」の問題と強い類似性を持っている。いずれも、その興味に比べて正確な情報が伝わりにくい社会構造があること、社会規範意識の好ましくない変容が根底にあること、放置すれば国の将来にかかわることなどである。加えて被害は男性より社会的弱者である女性に大きく現れる。
 最近産婦人科の先生方から子宮がんを引き起こすヒト・パピローマウイルスとタバコの関係について強い警告が出されている。膣は自然の仕組みで乳酸桿菌により酸性に保たれ、雑菌が増殖できないようになっている。しかしタバコの煙に含まれるベンゾピレンの化合物がその大切な乳酸菌を侵し、最近の乱れた性的ふるまいを考慮に入れても、不潔な「細菌性膣症」が3倍にも増えるという。同時にパピローマウイルス感染持続率が高くなり、当然子宮頸部癌の発生も多くなると思われる。
 最近十代二十代にこれらの感染症が急増し憂慮されているが、若い女性の喫煙率上昇と無関係ではないだろう。

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