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FCTCとタバコ事業法(2004年4月)


最新タバコ事情55

 政府は十日の閣議決定を経て、十一日にタバコ規制枠組み条約(FCTC)に署名した。まずは一歩前進と考えたいが、あまりに多くの問題が手付かずの状態であり、抜本的な政策転換が望まれる。
 「現在および将来の世代をタバコ消費による被害から守るための国際条約」を遵守するためには、稀代の悪法たる「たばこ事業法」の見直しが必須だが、どうも国内法改正には手をつけず、逃げ切ろうと算段しているように見える。「たばこ産業の健全な発展」を図りながら、厳しいタバコ規制などできるわけがない。
 呼応するようにJTは大々的なキャンペーンを開始した。「はじめに言います。ごめんなさい」とタバコが吸いにくくなった社会の変化を認めたうえで、吸える環境作りに執念を持って臨む決意だという。しかし「タバコを持つ手は子供の顔の高さだった」「七百度の火を持って、私は人とすれ違っている」とあくまで喫煙マナーに社会変化の原因があるような訴えかけで、自分たちが製造販売しているタバコというひどい欠陥商品に対する恥じらいは全くない。これが現在の国、JTのスタンスと考えてよいだろう。
 しかしいずれにせよFCTCへの批准は、なんとしてもクリアしなければならないハードルである。彼らが目指すグローバル化、つまり後進国に向けたタバコ販売戦略の道が閉ざされるからである。
 WHOの今年の世界禁煙デーの標語は「タバコと貧困」である。今世界のタバコ企業が、規制の強い先進国で売ることは諦め、貧しくタバコに無知な国々に狙いを移していることを非難したものである。

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