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タバコの煙が忍び寄る(2003年7月)


最新タバコ事情48

 健康増進法により、人々の集うほとんどの場所でタバコの煙を避ける権利が生まれた。しかし、気づかずにこうむっている受動喫煙の害が実は小さくない。
 これを明確に数値で示してくれた人がいる。
 中田ゆりさん、スチュワーデスを経て東大に入り大学院で公衆衛生を勉強しているちょっと変わった(?)ひと。彼女は私たちの身の回りに忍び寄る目に見えない煙を、デジタル粉塵計を持ち歩いて「粉塵濃度」として観察した。
 身近なファミレス、居酒屋、食堂などの飲食店50店で調べたところ、自由にタバコが吸える店の混んだ時間帯では、厚労省の定めた環境基準値のなんと18倍の粉塵濃度を示したという。とても家族連れでのんびり食事などできる環境ではない。分煙とされている店でも、エアコンの空気の流れにもよるが、喫煙するお客さんが増えるとともに、喫煙席より5倍も高い粉塵濃度を示した店もあったという。もちろん、完全に禁煙されているお店ではすべて基準値以下だった。
 多くの先進国では、法律によって飲食店が完全に禁煙化されている。それは客さんのみならず、そこで働く人々の健康を守るためである。日本では、タバコ対策の役に立たず、厚労省の「分煙ガイドライン」からも削除されてしまった高価な分煙機器を置いて、受動喫煙対策をしたつもりになっている公共施設がまだ見られる。まさに「無知は罪」である。
 「わざとゆっくり食事をして、4、5時間も粘って計測していると食事代もかかるし、お店の人には嫌な顔をされたりして大変でした」と嘆くものの、「何とかしなければ…」という意気込みあふれた中田ゆりさんでした。

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