栄えある“保健文化賞”受賞

下妻市・平間敬文医師 医歯薬界個人で初の受賞に喜び

メディカルニューズ(茨城県水戸市) 2005年(平成17年)9月20日 第428号

報道クリップ



高校生対象の“禁煙運動”20年の展開

全国へ波及した「講話活動」がみのる
すでに県医で「地域医療功労者賞」を受賞の実績

 茨城県下で高校生を中心に禁煙講話活動を二〇年間にわたり続け、受講者四十一万五千人の実績を積みかつ、県教育委員会を突き動かして「全県学校敷地内禁煙方針」へ踏み切らせる一方、全国的波及効果をもたらした「無煙世代を育てる会」代表・平間敬文民(下妻市江・平間病院長・茨城県医師会理事・真壁郡市医師会副会長)が栄えある″保健文化賞″(第一生命保険相互主催、厚労省・朝日新聞・NHKなど後援)を受賞する。受賞式10月5日東京で。平間氏の推せん母体・茨城県医師会の原中勝征会長は「永年にわたり、学校教育現場で、予防医学の立場から″禁煙教育講話″を高校生中心に実施、全県下の学校敷地内禁煙実践の原動力となった実績はすばらしいものがある」と称えた。が、この活動一三年日(平成9年)には、茨城医学会総会(主催・茨城県医師会=当時丸山泰一会長)席で「地域医療功労者賞」受賞して、県レベルでは一足早く評価されていた。この″保健文化賞″は、戦後の混乱期を経て、国民の心もようやくユトリをとり戻した昭和24年(一九四九)誕生させた、民間会社主催では伝統ある第一級の全国レベル褒章。本県の医歯薬界では、茨城県歯科医師会が団体の郡で受賞(昭和60年・第37回)しているが、個人の部では平間氏が初めて。以下は、受賞者を中心とするところの「無煙世代を育てる会」の禁煙講話活動の概要である。

影に病院スタッフの協力

県医活動で実績積み重ね功奏す

 まず、平間氏−。下妻市生まれ、成蹊大付属高校卒、日本医科大卒後日赤中央・津久井・水戸病院(第一外科副部長)を経て昭和55年(一九八〇)生地の現在地に開業。現在一般・療養型七五床。外科・内科・胃腸科・呼吸器科・整形外科・皮膚科・泌尿器科・肛門科を標榜。吉野重利副院長ら常勤医五人と浅野康弘事務部長らスタッフ(看護師・放射線技師・臨床検査技師・栄養士ら含む)が囲んで運営の万全化を期している医療法人(光潤会)病院。
 平間氏の医師会活動は、最近、平成8年春地元医師会理事。三期(一期二年)後の14年副会長、現在二期目。だが途中の16年春県医理事を兼務。しかし、県医には平成10年春に地域医療委員会、12年春に介護保険・在宅ケア委員会、14年春に地域医療委員会の委員に戻り、計三期六年の委員会活動中の13年秋「茨城医学会総会」地域医療分科会「禁煙・分煙活動の実際」をテーマにシンポジウムを立ち上げて、成功させた実績が高く評価された。すでに総会で地域医療功労者賞を受賞していたことも大きい。
 県医理事になった翌17年春、県医一大事業、年一回実施の県民との対話集会″市民フォーラム″に「日本のタバコ対策を考える健康増進法、タバコ規制枠組条約、そしてこれから!」をテーマに、専門家による基調講演、実践活動家によるシンポジウムを諸岡信裕常任理事と共に座長役をこなし、担当理事の役目を果たした。

平間氏らの禁煙運動20年の歴史

スウェーデン政策をヒントに運動展開する!

 ところで、禁煙のための実践活動−。病院開業して三・四年経過する中で、喫煙者の健康水準が、非喫煙者にくらべ、明らかに劣っていることに気づかされた。しかし、喫煙者自身問題意識を持って対応する点がない。そこで成人者を対象に禁煙活動を試みた。だが効果のほどは全くといってよいほど得られず、がっくりであった。
 どうすればよいか、考えたあげく、成人前の高校生対象ならどうか。それも個人指導ではまずい−と、理解ある身近な医師、高校教諭やOB、塾代表(会社員も含む)ら約二〇人に声をかけてグループ「無煙世代を育てる会」を昭和59年(一九八四)に結成した。近隣の高校に交渉して、いわゆる無料による出前の禁煙講話活動である。
 当時、禁煙社会に向かう米国の活動について、途切れ途切れに情報は入ってくるものの、禁煙教育の資料や教材といったものは皆無に等しく、出前の教材は大部分手づくりだった。映像にしたもの(スライドを含め)一時間半を医師二人が交代で説明、話をするのだが、間を持たせるのが大変であった。そんなとき、塾の講師をしているメンバーの一人が、やさしく繋ぎをしてくれて助かった。いわゆる″リレー講話方式″である。活動を始めて二〇年を経た今日も、ほとんどこのスタイルである。
 考えてみると、高校生たちは、さまざまな誘惑環境の中にいる今日、試しに、一度だけ−が、喫煙者の走りとなってしまう。ために、きちんとした知識を与えることで、タバコと無縁な世代にする。これ以外に喫煙容認社会を変える方策はない−これが出発点だった。ヒントはスウェーデンが取り組んでいたところの「ノー・スモーキング・ジェネレーションづくり政策」であった。

年間受講者三万人突破 高校生が80%を占める!

 この″出前講話″大切なことで、地域、地域の高校で理解を深めてくれたようだが、ある時点まで、押し売りに等しかったという。しかし、学校側のニーズに噛み合っていたのか、学校間の口こみにより急激に忙しくなっていった。開始して三年目に受講者は三万人を突破した。
 この内容が、朝日新聞の「家庭欄」に″煙に挑む男たちがいる″の見出しで載った。その後は受講申し込みが増えて、週一回ペースで講話回数をこなすというありさまで大わらわであった。続いて平成4年に読売新聞の「講点」に″無煙教育は小学生から″の見出しで載った。当時はタバコの自由化により、日・米のタバコ会社が販売競争に凌ぎを削っていた上、喫煙者の低年齢化が進行していて狭間の禁煙活動は苦しい時期でもあった。しかし、蝕まれてゆく少年少女たちを思うとき、じっとしていられなかった。グループで話し合って講話回数を逆にふやす決意をした。
 活動も途中から年平均二万人、多い年は三万五千人をこなすことになった。茨城県内のみならず、埼玉県を筆頭に千葉、栃木県などの高校からも講話の申し込みが相次いであり、週二回の講話もめずらしくなくなったことが大きな要因であった。したがって、平成17年3月末現在で、講話件数は六八二件(高校四六六校六八・三二%、中学校一八二校二六・六八%、小学校三四校四・九八%)受講者数は四一万四、九八九人となった。全体の七九・七四%は高校生、力を入れた差である。このはか教育・PTAや民間団体(会社も含む)は九三団体にのぼっており、全体の受講者数はさらにのびる。だろう−という。

全県教育施設禁煙へ 流れは全国同施設に波及!

 こうした禁煙講話、地域の高校で半ば押し売り的に急ぎ実施していったが、第一に、タバコは麻薬に匹敵する非常に厄介な薬物。「試しに吸ってみる」ということは成り立たない−ということが、一般に周知されていないということにあった。なぜ大人たちは、平気でタバコを吸い、なぜやめることができないのか。また、タバコを吸っている大人たちに、いま何が起こっているのか、タバコを吸う青少年の人生に、これから何が起こってくるのか、を正確に伝えて、タバコを売ろうとする力に対抗できるだけの「知的免疫」を与える大切さを、一個人でなくて、グループで、いわゆる「無煙世代を育てる会」のメンバーにより、訴えてゆく大切さを、平間氏は自覚したからだ−という。
 おかげで、この禁煙講話活動は、前記したように、受講件数、受講人員がふえたばかりか、各地で自ら行動する流れができていったともいう。平成10年(一九九八)に県内の八千代町において、日本初の「青少年無煙のまち宣言」を提唱された。これは各全国紙でも掲載されて、大きな反響を呼び、全国各地に行動の輪が広がっていった。
 まず、和歌山県教育委員会が、全県下の学校敷地内を禁煙にすると提唱。もちろん本県教育委員会も同様の対処をした。文科省にしても、全国の小中高校において同様の実施をするように通達したことはご承知のとおりである。現在では全国の実施成功率は四五%に達し、公立のみの全面禁煙実施は、静岡県において約一〇〇%、和歌山県は九九%、秋田県九六%、本県でも八九%。私立も含めて、間もなく一〇〇%台になるはず−という。

やはり協力者があった 教職・歯科医ら中心に!

 この活動の中心母体となった「無煙世代を育てる会」メンバーは約二〇人ほどいるが、その中で中心的存在として、会設立以来活動してきた方々を紹介する。以下は年齢順に掲載。
 ▼平間散文氏(下妻市・会代表・平間病院長・県医理事・地元医師会副会長・日本医科大卒・60歳)
 ▼廣瀬陽一氏(筑西市・セナミ学院代表取締役・上智大経済学部卒)
 ▼飯村省一氏(下妻市・同会事務局長、県立守谷高校長・東京教育大=現筑波大=理学部卒)
 ▼渡辺和夫氏(下妻市・渡辺歯科医院長・茨歯連元理事・警察医・東北大歯学部卒)
 ▼曾雌 隆氏(結城市・曾雌歯科医院長・茨歯会代議員・県西副支部長、奥羽大歯学部卒)
 ▼渡辺 進氏(筑西市・わたなべ歯科医院長・茨歯会理事・介護保険委担当部長・奥羽大歯学部卒)
 ▼津田 哲氏(筑西市・津田歯科医院長・東京歯科大卒)
 以上七人が現在活躍中の方である。また、つい最近故人となられた▼小松崎厚氏(筑西市・前三岳荘小松崎病院長・日本医科大卒)が中心的存在で協力していた。小松崎氏は平間氏と高校・大学で同級だった。
 同会は、平成14年(二〇〇二)8月、禁煙運動をさらに広く普及させるために映像教材をCD-ROM化したものを添付した「子供達にタバコの真実を」(かもがわ出版・A5版・一七六ページ)を発刊し売り尽くし、現在五版目の増刷、大変人気を呼んでいる。
 さらに平間代表は、厚労省ほか青森・愛媛県、東京都、そして神戸市などにおいて「禁煙フォーラム」のシンポジストとして招かれたり、日本思春期学会、日本小児外科学会、茨城県母子衛生学会の講師として、「無煙世代の育成」と題した講演も行っている。が、これらの申し込みも、ふえてきて手いっぱいという。

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