無煙世代を育む禁煙教育

無煙世代を育む禁煙教育 − たばこの被害を、いつ、どのように伝えるか 平間敬文

[特集] 未成年者の喫煙防止対策と保健師の役割−喫煙行動に焦点をあてたアプローチを中心に

へるす出版『生活教育』2003年10月号

はじめに

 思春期は、誰もが希望に満ちあふれ、見るものすべてが新鮮に感じられ、胸のたかまりから夜寝る時間さえ惜しく、すべてに柔軟に対応できるすばらしい時期です。
 しかし、これは長い人生において一瞬に終わってしまう貴重な時期でもあります。
 筆者は、たばこ産業が思春期のこの特性を利用し、思春期を標的にして販売促進活動を重ねた結果、喫煙者の低年齢化が進み、その激増といえる状況が起こっていることに対し憤りを禁じえません。それは、たばこの薬理作用により、思春期すべての可能性の開花がねじ曲げられ、ひらめきも、ときめきも、また健康に生きることまで奪い去られてしまうかもしれないからです。
 この憤りをエネルギーの原点として、筆者は「無煙世代を育てる会」を結成し、中学、高校生への出張禁煙講演を続けてきました。今年でちょうど20年となり、受講者数は38万人を超えました。
 ここでは、まだすべてを分析しえたわけではありませんが、38万人の講演の事前に行ったアンケートと講演後の感想文の分析結果からわかった、「どのような情報をどのように盛り込むと、喫煙に対する意識の変化、禁煙に向かう行動変容が得られるか」など、禁煙教育の問題点、たばこ規制後進国のわが国で実効性ある対応策について述べます。

たばこに関する真の情報開示

 日本社会はたばこ喫煙に寛容なばかりでなく、マスメディアを利用したたばこを擁護する情報を何の不信もなく受け入れ、政府および地方自治体が先立ってたばこ産業を盛り上げてきました。今、この先進諸国にまれな日本のたばこ事情は大きく変わろうとしていますが、現実にはまだまだ真実が正しく開示されないという大きな問題を含んでいます。これらを教育現場の体験から考えてみたいと思います。

[1] 思春期のニコチン依存について

 たばこ産業や財務省は、コカインや覚醒剤と比較し精神毒性がないから「合法的嗜好品」だと強弁しています。しかし、たばこがなければこころの平静が保てない状態が一生続くというのは、いかにも普通の人生とは言えません。同様に国の見解として厚生労働省の報告では「喫煙に依存性があることは確立した科学的知見となっている」とあります。
 さて、薬物たるたばこについて、宮里勝政氏は著書『たばこはなぜやめられないか』のなかでこう述べています。
「はじめての摂取時に非日常的な『快』を体験すると、その後もその状態を体験したいという欲求が生まれる。その後薬物の使用がある量を超えて続けられると、依存に特徴的な変化が次々にみられるようになっていく。
 これは薬物を摂取したいという『欲求』の増大であり、『耐性』の形成である(精神依存の一次形成)。そして、その欲求は次第に強くなっていく。さらに、体が薬物に対して慣れを起こした後も摂取を続けていると、別の減少が見られるようになる。それは薬物が体内から消失して行く過程で色々不都合な症状が現れるようになるのである。これらの症状は『退薬症候』あるいは『離脱症候』とよばれている。
 この段階では体の方は始めのころとはまったく違った状態になっている。そして、この退薬症候による不快から逃れるためにも、薬物が必要と感じるようになる。したがって、以前の薬物の直接の効果だけを求めていた欲求に加えて、退薬症候を抑えるためにも薬物が必要になっているのである。このような状態を『精神依存の二次形成』と言い、はじめの頃に比べ一層薬物をやめるのが難しい状態となっている。」
 これが、たばこに取り込まれていく過程です。一次依存のクラクラするような「快」の体験をときどき繰り返している多くの中学、高校生は、たばこ企業の毒針に掛かりつつある段階ということではないでしょうか。
 ただ、この状態は長くは続かず、だいたい数週間から1年足らずの吸入体験で二次依存の状態に入っていきます。これは開始年齢が早ければ早いほど短い期間で、また少ない延べ本数で成立するといわれています。依存度も高くなるようです。
 しかし、その後すぐ成人の普通の喫煙本数になるわけではありません。彼らには学校があり、もちろん校内で吸うのは困難ですから、強く抑制を受けます。われわれのアンケートでも、毎日吸う生徒で3本から10本といったところがいちばん多いのですが、本数は少なくても禁煙の困難さは大人たちに勝るとも劣りません。不規則な喫煙を強いられているだけで、立派な喫煙者です。むしろこのような抑制された吸い方が、ドラッグを使用するのと同じように、いちばんおいしい吸い方になっているのかもしれません。これは、中学、高校生と同じように隠れた吸い方をしている若い女性にも言えることだと思います。
 大きな問題は、最も大切なこの麻薬に匹敵するたばこの強い依存性(習慣性)について、文部科学省の学習指導要綱のなかでも恣意的と思われるほど掘り下げが浅いことです。
「ニコチンには依存性もあるので…」と妙に腰の引けた書き方になっていますが、これは「依存性があるから、一度手をつけるとほぼ一生吸うことになる」ときちんと知らせるべきでしょう。この点についての初期教育がしっかりしていないことから、以後の対応がすべて後手にまわってしまうと考えられるのです。

[2] たばこ産業の明解な戦略

 たばこを売る人たちほど、思春期について研究している人々はいないかもしれません。彼らは思春期に狙いを定め「たばこははたちになってから・それがルール」と牽制しながら「たばこは大人だけに許された愉しみ」と続けます。これは何か他人と違う自己表現の方法を求めている彼らに、一つのツールとしてたばこを試してみようとする動機をかき立てるものです。
 大人たちが押しつける社会規範や、年齢的に軽んぜられることに対する反発をうまくとらえ、「禁止」という言葉を使うことによりさらに若い人たちの興味を高めます。自分探しの困難さ、自己同一性確立への過程での苦しみを知悉して、上手に利用しています。
 学校での教師、友人関係のストレス、家庭での母親離れに伴うストレス、見えない未来についての漠然とした不安、これらのすべてを知り尽くしたうえで忍び込むようにたばこのマーケティングは行われていると言ってよいでしょう。「依存」や「習慣性」については絶対触れません。そうして一箱吸わせてしまえば、多くの場合、あの人たちの「勝ち」なのです。
 今JTがメインのコンセプトとしている「あ、ディライト」では、「あなたのかけがえのない歓びに出会うために」「瞬間のきらめきを感じるひとときを」と繰り返し訴えています。ストレートな「薬物体験の勧め」と言ってもよいでしょう。
 このところとくに女性に対しての販売戦略でなりふりかまわないやりかたが横行しています。販売状況の悪化から最低限の良識をふまえた自主規制すらとれなくなっているのでしょうか。
 「be you」「onもoffも、私スタイルで、行く」「これが私の生き方」などのキャッチコピーからも彼らの手の内が透けてみえます(図1)。「自己決定権、それを行使するのは自分で自分のことを決められるあなた」という訴求力のある言い回しです。
 『セーラム・ピアニッシモ』は、「自分の価値観を大切にしているから」「シンプルで洗練された私のスタイル」と訴えかけます。
 最近売り出し中の『アイシーン』というJTの新製品は、メンソールを強くし「こんな冷んやり、ちょっと初めて」「こんな爽やか、かなりいいかも・新涼感メンソール」と公正取引委員会に虚偽広告で取り上げてもらってもよさそうな宣伝をしています。これが東京を中心に大量の電車の中づりビラ、ビルボード広告で大々的にキャンペーンされているのです。
 これから、日本をつくる子どもたちを産み育てる若い女性に、「たばこを吸うことで新しい楽しみの世界を味わうことができる」と誘いかけるのは今までなされなかったことで、あげていくと怖くなるほどです。
 少年たちには「ルールを作ろう。自分だけのルールを」「楽しい時間は形のないものでできている。すばやく掴まえること」とマルボロが訴えます。キャメルは「PREASUREな時は自分が作る、人生をもっとポジティブに楽しもう」と呼びかけます。
 お金をかけた手の込んだ宣伝活動に、好奇心にあふれ、また思い通りにいかないもどかしさに悩む思春期世代が耐えるのは容易なことではないでしょう。

図1
大人のスタイリンググッズ当たります」と抽選賞品を宣伝している
「子供たちにタバコの真実を」(かもがわ出版)より


禁煙教育の実践に関わる諸問題

 すぐに体を悪くするわけではありませんし、何十年か先に病気になる確率が格段に高くなると繰り返しても、思春期の子どもたちに「健康被害」は喫煙開始への何の抑制要素にもならないでしょう。
 しかし、将来彼らに降りかかる根深いたばこの害から自分を守る最低限の知識をもたなければ、無知のまま社会に巣立ってしまいます。禁煙教育ではそのことをきちんと伝えなければなりません。

[1] われわれの禁煙教育活動について

 第一に、飽きられないことを目標にしました。同じ高さの目線を失わないよう注意しながら、「たばこって何だ」という問いかけを繰り返し、3人の演者が入れ替わり画像を駆使して訴えるリレー講話方式です。
 教育講演調になることを避け、まず若い人たちに巧妙に喫煙を誘いかけるたばこ企業の手口をわかりやすく解説することに力をいれました。
 インパクトある宣伝やキャッチコピーに隠された意図をできる限りさらけ出すことで、たばこを売る大人たちの「うさん臭さ」に気づいてもらおうと考えたのです。さわやかでおしゃれに見せかけた手口にだまされて「ニコチン中毒」になり、生涯いいお客さんにさせられることに対し、彼らがもつ自然な「反発力」を利用しようとの作戦です。
 そうしたうえで、今まで知らされていなかった「隠された悲惨なたばこ病の実態」を、画像を通じて自分の目で理解してくれれば思春期ゆえもちうる猜疑心をたばこに対する嫌悪に転換できるのではないかと期待したのです。
 日本では大人たちにも知られていない幾つかのたばこのうそも、それを知ることで彼らに行動変容をもたらす可能性があり、開示に努めています(図2)。

図2
表示のmg数が減るにしたがって、増えるフィルターにあけられた空気穴
「子供たちにタバコの真実を」(かもがわ出版)より


[2] 子どもたちの成長に合わせた禁煙教育の分業体制について

 われわれは大まかに禁煙教育の時期を(1)小学校1年から4年生、(2)小学校5、6年生、(3)中学校、(4)高校、(5)それ以降の未成年就業者、学生等の5段階に分けて考えています。
 (1)、(2)についてはそれぞれの担任教師、養護教諭に受けもってもらい、できればたばこについての学習をPTAの会合などに絡め、親子が同じ情報を共有するようにしてほしいと思っています。中学校以降も、もちろんそうすることが望ましいのですが、家庭の協力は得られ難くなり、なかなかできないのが実情です。われわれの今までの体験では、なんと言っても(2)小学5、6年生に父母と一緒の講話をするのが最も効果的でした。
 (3)中学校以降の禁煙教育は学校全体を一度に行うことが最も大切です。
 学校の理解が得られず、学年別、あるいは特定のクラスのみということになることが多いのが実状ですが、効果はきわめて薄められてしまいます。「入学したての1年生だけでも」とよく依頼されますが、「それではあまり効果がありません。全校一緒だったらぜひやらせてください」と返事することに決めています。
 ことたばこに関しては、学校という一つの組織体、あるいは子どもたちの小社会が共通の問題意識をもち、一定の知識を共有しない限り到底実効性は望めません。学校において、たばこは上級生から下級生への伝染性疾患ですから、大変な努力をして一部の生徒の認識を深めても、あっという間につぶされてしまいます。
 また先生方の認識もあるレベルで共有されないと、これは大きな障害になります。先生方のたばこの害に関する知識も観念的で、意外に浅いのではないかという印象をもっています。
 一般の人々と同じように、喫煙教師はこういった講演にはきわめて消極的です。そうしてこの人たちが、後で学校を無煙環境化するとき必ず大きな障害になります。われわれの経験から、禁煙教育は学校全体でそれも一度に行うべきだと確信しています。さみだれ式にやることは労多くして効少なしです。

[3] 禁煙教育プロジェクトチームの必要性

 学校全体を禁煙教育するためには、啓発の目的を一度に遂行できるだけの力のあるプロジェクトチームを組織する必要があると考えています。これには地域の医師会、歯科医師会、薬剤師会、学校側からは保健指導主事、生徒指導教諭、養護教諭といった幅広い連携が求められます。職域では保健師の協力が必要です。
 われわれのグループも実は教師からの呼びかけで結成されたものです。20年前、「高校でたばこがはやってどうしようもない。教師がいくら言っても耳を貸さない。恐ろしさを肌で知っている医者が彼らに直接話してみてくれないか」という働きかけからです。今でも、事務局を引き受けてくれているその教師から、「スケジュールはこうなっているから、いついつどこに行きなさい」と言われ、スタッフは現地集合、講演が終われば現地解散です。
 チームには医師と歯科医師のコンビが含まれるのが望ましいと考えています。今までたばこの健康被害というと、肺がん、肺気腫など将来に起こる医科系の病気が主体でしたが、思春期世代に訴えるのはなんと言っても口臭のもととなる歯周病や、歯肉が黒ずんでしまう色素沈着症(メラノーシス)です。とくにこれらは、女生徒の喫煙者にとって大きなショックになります。
 学校全体を対象にして講演を行うにはいくつかの障害があります。まず会場の設定ですが、体育館に暗幕設備のない学校は少なくありません。インパクトある講話内容も大切ですが、「悲惨なたばこ病」を視覚的に訴えるためには、映像機材も容量の大きいものが必要になります。われわれは2400ルーメンのLCDプロジェクターを使っています。
 メンバーは医師、歯科医師、教師、映像担当と4〜5人いると楽です。各県レベルで、2〜3チームあれば十分でしょう。ぜひ理解のありそうな先生方に声かけをしていただきたいのです。協力したいと思っている医療職の方々は決して少なくありません。きっかけがないだけのように思います。

[4] 複数回の禁煙教育の必要性

 われわれは講話の後で、先生方に「必ず、2週間くらいしたら、ロングホーム・ルームか何かでこの問題を後追いしてください」とお願いしています。
 麻薬類に対しての回避反応を定着させるためには、単一回のアプローチでは無理で、多くの伝染病ワクチンと同じように追加免疫が必要です。いったん獲得した免疫力も、時間がたつにつれ急激に低下しますが、追加ワクチンでさらに強化されることをブースター効果と言います。講話から一度インパクトを受け、それが消えそうになるころ追加の刺激が加えられるとかなり理解が強化され、たばこに対する抑止力となって残るようです。
 これははっきりした証左に基づいた主張ではなく、養護の先生方がきちんとフォローアップをしてくれたところと何もしなかった学校の違いをみて気づいたことです。
 WHOも「ある期間に複数回、また継続的に働きかけるのが大切である」と勧めています。

管理者(校長)の学校内禁煙についての認識について

 一般企業より、学校における管理者の権限は大きいように思えます。校長が喫煙者の場合、学校内禁煙にも抵抗があるようです。たばこ問題を口にするだけでプレッシャーを感じると、養護の先生からよく聞きます。喫煙する管理者にとっては、理屈ぬきにあまり面白くない話なのでしょう。
 先進国では子どもたちの学び育つ学校というエリアが禁煙でないことの方がおかしいのですが、日本では「好ましからざる依存性のある薬物」とする厚生労働省の見解より、財務省の「法で認められた大人の嗜好品」とする意向が優先され、それが管理者の喫煙者擁護の論理にかなり影響を与えているように思います。しかし実のところは自己の喫煙の正当化や、来訪者への気兼ね、喫煙教師と非喫煙者の摩擦回避の口実に使われているのが実状ではないでしょうか。
 学校内禁煙については教職員の意識向上も大切ですが、上位機関の決定が大きな解決策となります。和歌山県、茨城県、愛媛県の教育委員会では県レベルで「公立学校敷地内禁煙」の通達がなされました。このところ青森県や愛知県、岐阜県、福井県でもその方針が明らかになり、急速に全国的な広がりをみせています。
 米国でも、連邦政府に任せていたらたばこ問題は解決しなかっただろうと言われています。地方自治体、企業、団体などのいわゆる政治的サブシステムとも言われる力によるところが大きかったのです。日本においても同じような変化がこれから必ず起こってくると考えています。
 もっとも今では管理者が、子どもを守ることが自らの第一の使命と思い至れば、PTAの協力を得るだけで学校敷地内禁煙はたやすくできます。健康増進法という大きな法的根拠があるのですから。

喫煙する青少年への実効性ある対応

 医学的に、青少年の禁煙支援はNRT(ニコチン置換療法)の普及により劇的な変化がありました。しかし、教育の現場では今なお旧態依然たる処分が行われています。喫煙生徒指導の1回目は自宅謹慎と反省文、2回目は無期停学、3回目は退学ともなるそうです。
 考えてみれば、ドラッグの売人には何のおとがめもなく、引っかかったお客つまり子どもたちだけが罰せられるわけで筋が通りません。
 これは実に痛ましい規定としか言いようがなく、早急に改善しなければなりません。医学的にみれば意味をなさない方策です。高橋裕子奈良女子大教授が繰り返し指摘しているように、喫煙は脳細胞の病気であり、肺炎にかかっているものを、罰として自宅で寝ていろというようなもので治るわけがなく、きちんと治療を受けさせるべきものです。
 これからはこの考え方が主流となるでしょう。幸いニコチンパッチを用いたNRTは、成人よりはるかに青少年に効果が大きいのです。養護や生徒指導に関わる先生方、保健師さんが、喫煙を「治療を要する病気」ととらえ、父母を通じて医療機関への橋渡しをしてくれるのがいちばんよい方法だと思います。ニコチンパッチによる治療は、今では医科に限らず歯科の先生方からも処方を受けられます。何の害もないし、ほとんどが一週間以内に治療が済み、大人のように長期間パッチが必要なケースはあまりありません。
 大切なのは、禁煙した後の「禁煙を継続させる指導」です。実はこれが最も困難な問題で、医療機関には手が届かないところなのです。家庭か学校に頼るしかありません。これを学校教育の重要な一分野と考え、再喫煙を防ぐための支援をしていただけたら幸いです。

結びに

 かつてRJ・レイノルズの役員は「なぜあなたはたばこを吸わないのですか」と問われたとき、「われわれは売るだけだ。あんなものはPoor,Black,and Stupid peopleにくれてやる」と答えたといいます。日本ではこの最後にあげられたStupid people(無知な、愚かな人々・何も知らない人々)として、思春期世代が最も重要な標的となっています。たばこを国際的にマーケティングしている人々にとって今の日本市場での販売促進は、赤子の手をひねるよりたやすいことでしょう。雪崩を打つように中学生、否、小学生までもが、ニコチンの暗いトンネルに連れ込まれていきます。この世代をたばこから守る方策はあるのでしょうか。
 実はたばこを売ろうとする力さえ働かなければ、この問題は自然に解決するだろうと考えています。しかし現実は、激しさを増す販売攻勢に誰もがいら立ちながら、手をこまねいて立ちすくんでいるのが実状でしょう。
 FCTC(タバコ規制枠組み条約)が解決の糸口になるかもしれません。いま世界が、いやわが国も間違いなく変化しています。たばこ問題の歴史的な大きな転換点にいる気がしています。しかし、まさに今、続々とたばこの世界に引き込まれていく子どもたちがいます。黙ってみているわけにはいきません。
 20年、延べ645校、38万人の子どもたちの前に立ち続けて得た、たばこと戦う方策について述べました。「脅し教育」と言われようと、日々の臨床経験から思い知らされる本当に恐ろしいタバコの害を、「あいまいさ」なく知識として伝えることがわれわれの使命と確信しています。たばこの真実を伝えることこそ、思春期世代への最も有効な禁煙教育なのです。

[参考文献]

  1. 黒木登志夫:新版がん細胞の誕生、朝日選書
  2. A.L.フリッチュラー:タバコの政治学、剄草書房
  3. 伊佐山芳郎編著:さらばたばこ社会、合同出版
  4. ティム・ヒューワット:現代の死の商人、保健同人社
  5. 高橋裕子:禁煙外来の子どもたち、東京書籍
  6. 宮里勝政:タバコはなぜやめられないか、岩波新書
  7. 林敏郎:流行する肺ガン、健友館
  8. 平山雄:タバコはこんなに害がある、健友館
  9. 渡辺文学:たばこ病読本、緑風出版
  10. P.J.ヒルツ:タバコ・ウォーズ、早川書房
  11. タバコと病気、BIO Clinica 17、北隆館
  12. 花井喜六:アメリカ禁煙革命、近代文藝社
  13. 伊佐山芳郎:現代タバコ戦争、岩波新書
  14. 禁煙ジャーナル:たばこ産業を裁く、実践社
  15. 斎藤麗子:たばこがやめられる本、女子栄養大学出版部
  16. 厚生省変:喫煙と健康、保健同人社
  17. 薗はじめ:やめる禁煙、治す禁煙、大月書店
  18. 平間敬文:子供たちにタバコの真実を、かもがわ出版

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